映画祭への道~字幕翻訳の世界
平成17年10月、大阪国際交流センターで開催された字幕翻訳者として第一線で活躍されている岡田壯平氏の字幕翻訳セミナー。その一部を全5回にわたってご紹介いたします。
- 講師:岡田壯平氏プロフィール
- <第一回>字幕翻訳者への第一歩~あの頃は僕も初心者だった~
- <第二回>活きた翻訳を生み出すには?~岡田先生からのアドバイス~
- <第三回>その疑問にお答えします!~スラングやダジャレはどうやって訳しているの?~
- <第四回>劇場字幕の裏側~劇場字幕はさらに苦労の連続!?~
- <第五回>字幕翻訳を職業にする!~一番聞きたかったあの話~
Road to Film Festival ~映画祭への道~
映画祭ドットコムは考えました。
「日本のインディペンデント映画を世界中で見てもらうために必要なことは? 」
やはり大きいのが言葉の問題。
内容を理解しないと作品の良否もわかりませんよね。まずは海外作品を日本語に。さらには日本の作品を英語に。字幕を付けることができれば、インディペンデント作品はもっと気軽に海外へと飛び立てるはず!
そこで映画祭ドットコムは字幕翻訳セミナーを企画しました。 字幕翻訳の世界がぐっと身近に!
~ 昨年、大阪で開催された字幕翻訳セミナーの模様をご紹介 ~
映画好き・語学好きの方なら一度は字幕翻訳に興味をもったこと、ありますよね? でも“字幕翻訳なんて、夢のまた夢…”って簡単にあきらめていませんか?
平成17年10月、大阪国際交流センターで開催された字幕翻訳セミナーでは、 「GOAL!」「ショーシャンクの空に」など、世界的に有名な映画の字幕翻訳者として第一線で活躍されている岡田壯平氏をお呼びして、講演をしていただきました。
プロになられたいきさつから、翻訳のノウハウ、業界ウラ話まで わかりやすく、おもしろく、普段は決して聞くことの出来ない興味深いお話が盛り沢山!
「夢を叶えられるかどうかは自分次第かもしれない…」
字幕翻訳者を目指す、もしくは憧れている受講生のみなさんに、ひとすじの希望を与えてくれるようなセミナーでした。その一部を全5回にわたってご紹介いたします。
字幕翻訳者への第一歩~あの頃は僕も初心者だった~
さあ、あなたもここから最初の一歩を踏み出しましょう!!
字幕翻訳者になった理由
あれは19年前、「東北新社」という所の字幕制作会社へ吹き替え翻訳をやりたいと飛び込みセールスに行ったんです。 その時は字幕翻訳というものを知りませんでした。あれは自動的に誰かがつけてるんだろう、配給会社が日本の観客のためにどこかからつけてくるんだろうと思っていました。職業として存在するとは知らなかった。 ですから最初から字幕翻訳者になろうと思っていたわけじゃなかったんですよ。
そもそも飛び込みセールスに行ったきっかけというのは・・・
今の家内と同棲していた当時、ある日彼女が「明日の米がないわ」と言ったんです! 「やばい!」その頃の僕は一級建築士として住宅や店舗の設計をしていたんですが、彼女のその一言で顔が真っ青になりました。「彼女に迷惑をかけ続けてはダメだ」そう思い、両親が俳優だったこともあり、もともと映画に接する機会が多かったので吹替え翻訳をやってみようとなったんです。
104で電話番号を調べ、自分で電話をかけて面接に行きました。 「明日の米」事件にはとんでもないオチがあって、今から3年ほど前「あの時、米がないって言われたから作家建築家の夢を捨てたんだぞ」と言ったら「あらそうだったの?明日買いに行けばいいと思って言っただけよ」と返されました。
女の一言というのは男の人生を変えるんだなと思いましたね!彼女が何も言わなければ、僕は今頃安藤忠雄さんみたいな建築家になれたかもしれないのに(笑)、としばらくの間ショックでした。 人生なんておかしなものです。このようにして流れ着いた仕事ですが今は大切にやっています。
翻訳は非常に楽しい仕事です。同じ映画には2度と会えません。楽しい短編小説を次から次へと読んでるようなものなんですよ。
リライトで学ぶ
当初字幕セクションが忙しかったので、吹き替え翻訳の勉強をする間生活のために字幕セクションで演出のアルバイトをし、よくリライトをやらされました。映画用に翻訳者が書いた縦書き原稿を、ビデオ用に横に書き換える仕事です。 なぜリライトが必要だったかというと、そのころはレンタルビデオ店ができ始めたばかりで棚がガラガラに空いていたんですね。だから、ビデオというものができるずっと以前からあった「真昼の決闘」とか有名な映画をビデオ化して棚を埋めていくわけです。
演出のバイトをしながらリライトをしているうちにいつの間にか字幕のほうに浸かっていました。こうして東北新社に出入りしているうちに、先輩翻訳者の口利きで映画の翻訳に入っていったわけです。怒涛のような3年間の後、気づいたら字幕翻訳者になっていたというのが実際のところです。
リライトをずっとしていると、なんと書き写すだけで字幕翻訳の勉強になるんです。 「ここで改行」とか「これは斜体文字に」など字幕の世界にはキリがないほどのルールがあるんですが、リライトするとそれが自動的に身につきます。
これは字幕翻訳の勉強において非常に重要なことです。僕の場合当時翻訳学校なんてほとんどありませんから、そうやって大先輩たちの字幕原稿を書き写すことで覚えてきました。あとは場数を踏んで今に至るわけです。
ある程度リライトで自学自習したあと、通信教育などのトライアルで自分の実力を試してみる。最後のまとめとしてそういうところを利用するのがいいかもしれません。
何も最初から無理して翻訳学校に行かなくても、独学で大丈夫です。
英語力
僕は外国の方と話すことに緊張感はないですが、そんなに流暢には話せません。
概して翻訳者は皆そんなにペラペラではないです。ビデオテープと台本を見て翻訳しますからヒアリングするわけではないですし、直接的なスピーチ能力というのもあまり要求されません。ですから、僕に関して言えば、通訳と比べて流暢に話す必要もありません。
大学は最初英文科にいてその後理工学部に編入したんですが、英文科にいたときの英語能力が今の翻訳に役立っているかというと決してそうではありません。なぜかというと映画は全て口語だからです。話し言葉であって書き言葉ではありません。これは同じ英語であっても種類が違います。正直言って中学校レベルの英語力があれば読めます。あまり高等なものは必要ありません。
では何が必要かというと、一にも二にも慣れ。それに尽きます。話し言葉では文法の間違いというのもザラですからね。
>>>【第二回】活きた翻訳を生み出すには?~岡田先生からのアドバイス~
- 岡田壯平氏プロフィール:
- 1953年7月東京生まれ。両親とも役者で世田谷区育ち。
- 私立明星学園小・中・高卒業をし、上智大学文学部英文学科、早稲田大学理工学部建築学科を卒業。一級建築士の資格も持つ。作家建築家を目指すも結婚をきっかけに断念し、映像翻訳の仕事へ。東北新社でアルバイトとして働きながら吹き替え翻訳、字幕翻訳を修業し、先輩翻訳者の方々の紹介で映画字幕翻訳の仕事へ。趣味はジャズを聴くこと、バイク、スキー。
- 心に残る字幕翻訳:
- 「レオン」「ショーシャンクの空に」「コーチ・カーター」「トラフィック」「許されざる者」「フォーガットン」「ライディング・ザ・ブレット」「リプレイスメント」「バーティカル・リミット」等々。


