映画祭への道~字幕翻訳の世界 連載第2回

字幕翻訳ワークショップ2007概要と応募

平成17年10月、大阪国際交流センターで開催された字幕翻訳者として第一線で活躍されている岡田壯平氏の字幕翻訳セミナー。その一部を全5回にわたってご紹介いたします。

活きた翻訳を生み出すには?~岡田先生からのアドバイス~

吹替翻訳

多くの映画が吹替も公開されていますよね。だから吹替にも目を向けておくと将来いいと思います。これからは字幕と吹替両方できると制作会社への売込みも有利です。 いい日本語が書けるということは、字幕にとっても吹替にとっても「いいセリフ(訳)が書ける」ということとイコールなんです。そういった意味でいい日本語が書けるようになると、それは自然と字幕だけでなく吹替のほうにも通用します。

吹替に関しては字幕のようなルールはほとんどありません。とにかく感情移入をしながら喋って英語の長さに合わせてどんどん訳せばいいのですから、字幕のようなうるさいルールはありません。だから書けるようになってきますよ。ただし字幕以上に生きたセリフになっていないとダメです。

字幕翻訳に関する苦労

よく訊かれますが、1から10まで全部が苦労です。本当に苦労の連続ですよ。 すごく辛くてしんどいですが、自分が訳した字幕を試写などで見るのはやはり楽しいです。一番堪能できるのは翻訳者ですから。映画の隅々まで一番よく知っているのは、実は翻訳者なんですよね。

アルバイト当時、翻訳の大先輩にこっそり質問したことがあります。 「いい翻訳ってどうしたらできるんですか?」すると面白い返事が返ってきました。「映画の中に入って楽しめばいいんですよ」 「自分も映画の中に入っていって映画と心を一つにして楽しむこと」が映画の中に入ることだ。第三者として見るんじゃなくて当事者として楽しくやるんだ。良質な感情移入だ。

僕はこの言葉の本当の意味がわかるまで10年以上かかってしまいました。

また、全体をただ綺麗に訳すだけがプロじゃない。「綺麗に訳せました」「特に文句をつける所はありません」これではプロじゃないんです。 決めるところはビシッと決め、心に残る訳を作ってこそプロなんですよ。そつなく訳しただけじゃアマチュアなんです。

辞書

みなさんは翻訳者の机の上がどうなっているかをご存じないと思いますが、かなりシンプルです。何があるかというと、ビデオテープを再生して見るためのモニターとパソコンのモニター、それだけです。

では辞書はどうしていのるかというと、全てパソコンのハードディスクに入れています。普段、紙の辞書を使うということはまったくありません。大きな辞書がパソコンに4種類くらい、それを串刺し状態に検索して調べています。

先輩のMacを見に行ったり直したりすることがあるんですが、こちらの部屋も僕のそれと似ていました。翻訳者は知的職業だから部屋には数え切れない本があるだろうとお思いになるかもしれませんが、少なくとも僕とその先輩の部屋にはあまり本がないです。

翻訳していてわからない部分が出てきた時は、本で調べるよりもその分野の人に直接聞いたほうがすごくよくわかるんです。 たとえば医学に関することでどうしてもわからない言葉があっても、百科事典で調べたってわからない。専門の辞書で調べると余計わからなくなるんですよね。「電気ショック」という言葉を例に挙げてみしょう。「医者のセリフとしていいの?現場で使う?変じゃない?」こういう疑問が浮かんだときは何で調べたらいいのか。

こんな時は医者の友達がいるので彼に聞きます。「除細動」というらしいですね。

一番確実な手は法律のことは法律の、医学のことは医学の、料理のことは料理の、という風に各分野に友達を作ることです。書物で調べても限界を感じることがありますから。もちろん個人的に好きな井伏鱒二の小説などは蔵書として部屋にありますが、各分野の本が仕事部屋いっぱいに納まっているということはありません。

>>>【第三回】「その疑問にお答えします!」~スラングやダジャレはどうやって訳しているの?~

岡田壯平氏プロフィール:
1953年7月東京生まれ。両親とも役者で世田谷区育ち。
私立明星学園小・中・高卒業をし、上智大学文学部英文学科、早稲田大学理工学部建築学科を卒業。一級建築士の資格も持つ。作家建築家を目指すも結婚をきっかけに断念し、映像翻訳の仕事へ。東北新社でアルバイトとして働きながら吹き替え翻訳、字幕翻訳を修業し、先輩翻訳者の方々の紹介で映画字幕翻訳の仕事へ。趣味はジャズを聴くこと、バイク、スキー。
心に残る字幕翻訳:
「レオン」「ショーシャンクの空に」「コーチ・カーター」「トラフィック」「許されざる者」「フォーガットン」「ライディング・ザ・ブレット」「リプレイスメント」「バーティカル・リミット」等々。