映画祭への道~字幕翻訳の世界 連載第3回
平成17年10月、大阪国際交流センターで開催された字幕翻訳者として第一線で活躍されている岡田壯平氏の字幕翻訳セミナー。その一部を全5回にわたってご紹介いたします。
- 講師:岡田壯平氏プロフィール
- <第一回>字幕翻訳者への第一歩~あの頃は僕も初心者だった~
- <第二回>活きた翻訳を生み出すには?~岡田先生からのアドバイス~
- <第三回>その疑問にお答えします!~スラングやダジャレはどうやって訳しているの?~
- <第四回>劇場字幕の裏側~劇場字幕はさらに苦労の連続!?~
- <第五回>字幕翻訳を職業にする!~一番聞きたかったあの話~
「その疑問にお答えします!」~スラングやダジャレはどうやって訳しているの?~
スラングはどうするの?
新しいスラングなどは台本に翻訳用の解説がついてくる場合もあります。
翻訳用に渡される台本というのはアメリカの専門会社が作っています。もちろん撮影用の台本ではありません。映画が完成してから耳で聞き、書き取ったものです。
インターナショナル・バージョンとして海外に輸出される映画に対しては、海外の翻訳者が使う専用の台本をつけて配給されます。新しいスラングやわかりにくいと思われる言葉には懇切丁寧な解説がついています。
中には解説のついていない台本もありますが、そういうときは必ずネイティブの友達に確認します。
ダジャレが出てきたら?
これは難しいです。このときは運が悪かったと思ってあきらめましょう(笑)。なるべく近い形で日本語のジョークを必死で考えるのみです。こればかりは悩むところで、共有している文化が違うので難しいですね。
ジョークのところはネイティブと一緒に見てもらいたくないです(笑)。
英語以外の映画の場合?
香港映画を翻訳する機会もあり、「岡田さん、凄いですね!広東語もできるんですね!」とよく言われますが、僕がいろんな外国語ができるわけではありません。
なぜ広東語ないし北京語を翻訳できるかというと、実は英語に訳した台本をもとにしているからです。ですから英語台本があれば何語でも翻訳できるわけです。用心深い配給会社の場合は、あとでそこに言語チェックを行います。あまりにもかけ離れた訳には訂正が入ります。
このあいだ東京の国際映画祭用に翻訳した言語はモンゴル語でした。これも英語字幕がついているから翻訳ができるんです。通常では「ここの英語はモンゴル語の元の意味とは違うから訂正してください」となるんですが、今回の言語チェックの方はほとんど訂正を入れてこなかったですね。ただひとつ、「モンゴルではレスリングとはいいません。モンゴル相撲といいます」。なるほど、そのとおりです。
もちろん、いろんな言語ができるのであればそれに越したことはありません。多言語ができるなら大いにそれを活かすことができます。「韓流」のような流行もありますしね。
韓国語の翻訳者は今、足りなくてしょうがないそうですよ。ですから韓国語ができるのであれば今こそ重要な武器になります。
誤訳をしてしまったら?
翻訳は配給会社が仕事を依頼してくるのですが、仕上がりのチェックは会社によりまちまちで厳しいところとそうでないところがあります。
ペナルティというものは特にありませんが、もしも駆け出しの翻訳者がドラマの根幹的な所で誤訳をしたら1年くらい干されるでしょうね。
しかしそれで将来が奪われるということではありません。配給会社側もおそらくその翻訳者のセンスを見込んで使っていますので、誤訳が度重ならない限り、また使ってもらえると思います。
どんなに注意していても僕もたまにやってしまいます。思い込みの誤訳がほとんどです。ビデオグラム(ビデオやDVDなど)にする段階で気づいていたらそこで直します。
>>>【第四回】「劇場字幕の裏側」~劇場字幕はさらに苦労の連続!?~
- 岡田壯平氏プロフィール:
- 1953年7月東京生まれ。両親とも役者で世田谷区育ち。
- 私立明星学園小・中・高卒業をし、上智大学文学部英文学科、早稲田大学理工学部建築学科を卒業。一級建築士の資格も持つ。作家建築家を目指すも結婚をきっかけに断念し、映像翻訳の仕事へ。東北新社でアルバイトとして働きながら吹き替え翻訳、字幕翻訳を修業し、先輩翻訳者の方々の紹介で映画字幕翻訳の仕事へ。趣味はジャズを聴くこと、バイク、スキー。
- 心に残る字幕翻訳:
- 「レオン」「ショーシャンクの空に」「コーチ・カーター」「トラフィック」「許されざる者」「フォーガットン」「ライディング・ザ・ブレット」「リプレイスメント」「バーティカル・リミット」等々。


