映画祭への道~字幕翻訳の世界 連載第5回

字幕翻訳ワークショップ2007概要と応募

平成17年10月、大阪国際交流センターで開催された字幕翻訳者として第一線で活躍されている岡田壯平氏の字幕翻訳セミナー。その一部を全5回にわたってご紹介いたします。

「字幕翻訳を職業にする!」~一番聞きたかったあの話~

どうやって仕事を取ってくるの?

会社専属でやっているんじゃないかと思われているようですが、字幕・吹き替え翻訳者はほとんどがフリーランスです。自分で仕事を取ってくるんです。

また、まれな例ですが社内に翻訳室という所があって翻訳をさせている会社もあります。歩合制で、基本給+何本翻訳したかで上乗せされるそうです。生活は安定しますが面白味には欠ける、とアルバイト時代の友人は言っていました。もっと劇場の仕事をやりたい!という欲求が溜まるみたいですね。

具体的に僕がどうやって仕事を取ってくるかというと、この仕事を始めて19年(東北新社時代3年間、フリーになって16年間)、ラッキーなのかもしれませんが、実は特に積極的な営業活動はしていません。

「字幕製作の世界って小さな村みたいなものなんだね」とある人は言いますが、35mm作品の翻訳に関してはそういうところがあります。

しかし今は字幕の仕事というのは35mm以外にもいっぱいあります。例えばドキュメンタリーや特典映像もありますし、多チャンネルの時代ですから字幕翻訳のニーズというのは非常に高まり広まっています。

35mm以外のビデオグラム系(ビデオやDVDなど)の仕事においては、日本中どこにいてもできます。

バイト時代の仲間の一人は、今、岐阜県の多治見という所で仕事をしています。何の支障もありません。原稿は全てメールです。台本さえもメールで送られてくる場合があります。

そうなるとビデオグラムに関してはどこにいても仕事ができる。たとえ自学自習でも2年間みっちりやって自分の足でビデオ制作会社の門戸を叩いて何らかの仕事をもらえれば、日本中どこにいてもできる仕事です。原稿は当然のことながらメールで送る時代ですから。

ちなみに映画の翻訳は平均5日で一本仕上げます。どんなにセリフの多い作品でも一週間です。配給会社もそれぐらいしか時間をくれないんですよね。今はかなりスピードが要求されます。字幕・吹替翻訳者は体力勝負ですよ。

ある翻訳の先輩は、夕方6時くらいに電話をかけるともう家にいないんだそうです。飲みに行っているそうですよ。いつ仕事をしているのかと本人に聞くと、朝の10時くらいから夕方5時くらいまでしか仕事しないって言うんです。その方はものすごい集中力で仕事をするものだから、その時間内で人並み以上の量の翻訳をこなしてしまうんですよね。

僕はそんな芸当はできませんので、11時ごろから仕事を始めて夜中の12時くらいまでやっています。最後にナイトキャップを飲んで1時半くらいには寝る。朝は8時半くらいに起きて新聞を読んだりスポーツジムに行ったり自分の時間を過ごし、また11時くらいから始める。それが僕の一日です。

最近、映画翻訳の仕事が一部の人々に独占されているという話が出ていますね。でも、どの業界もそうですが翻訳者も年をとります。翻訳業界も例外ではありません。いつかは入れ替わります。現在だって過去の翻訳者が亡くなって世代交代しているわけです。僕もそのおかげでジャッキー・チェンの映画の翻訳が回ってきたんですよ。ただ、必要人数が少ないのは確かです。35mm作品で言うと全体でもせいぜい30人くらいでしょう。

ですが映画祭関係でも進出できますよ。国際映画祭をきっかけに、という例も多々あります。

とにかく健康を維持して精進し、焦らずに順番を待つことです。

翻訳料

映画の翻訳料というのはリール数で計算します。映写用のリールには映画のフィルムが巻いてあり、それぞれを「一巻」と数えます。この巻数で翻訳料を算定するんです。標準的な長さの映画なら10巻です。料金は一巻あたり上限3万円、10巻で30万円。

また、映像翻訳は買い取り制で印税制ではありません。ですから二次以降使用料という買い取り料金がプラスされます。これは映画につけた字幕翻訳が、ビデオやDVD、地上波放送、衛星放送、ネット上のレンタルなどに使われるその対価としての料金です。

この二次以降使用料はメジャーとインディペンデントで値段が変わります。

ここでいうメジャーというと、ワーナー、ブエナビスタ、UIP、ソニーなどアメリカの映画会社の日本支社です。二次以降使用料は翻訳料の70%。

インディペンデントは、東宝東和、松竹、日活、ヘラルド、GAGAなど日本の会社です。二次以降使用料は翻訳料の50%。

《一例》
メジャー 翻訳料30万円+二次以降使用料(30万円×70%)=51万円
インディペンデント 翻訳料30万円+二次以降使用料(30万円×50%)=45万円

インディペンデントの中であまり資本力のないところは一巻あたり3万円以下の場合もよくありますが、メジャーは一律で決まっています。

ビデオグラムの場合「10分幾ら」で算定します。以前引き受けた仕事では10分あたり2万1,000円でした。45分もの(1時間番組)は50分として計算しますので、1本翻訳すると2万1,000円×5=10万5,000円。劇場物のような二次以降使用料はつきませんが、コンスタントにこなしていくとかなりの収入になってきます。僕も時々頼まれて受けています。

ただし、駆け出しの翻訳者は10分1万円のこともあります。駆け出しだから仕方がない。もしかすると1万を切るかもしれません。しかしそこからどんどん上がっていきますよ。がんばってください。

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講義の後は、岡田壮平先生が実際に翻訳された映画「ライディング・ザ・ブレット」を使用して、字幕翻訳の実技体験。

翻訳のコツから業界の裏話まで、参加者の方々にはたっぷりご満足いただけたアッと言う間の2時間でした!

■前回よりさらに充実の内容でお送りする..... 字幕翻訳ワークショップ2007概要と応募

講師には岡田壯平氏!
「講義がおもしろくて楽しい!」と定評の岡田壯平氏を今年も講師としてお迎えしました!
実践・字幕翻訳【ショートフィルムに字幕をつけてみよう!】
作品時間10分の映画を鑑賞後、実際に翻訳に挑戦していただく翻訳実践もありますのでお楽しみに!
岡田壯平氏プロフィール:
1953年7月東京生まれ。両親とも役者で世田谷区育ち。
私立明星学園小・中・高卒業をし、上智大学文学部英文学科、早稲田大学理工学部建築学科を卒業。一級建築士の資格も持つ。作家建築家を目指すも結婚をきっかけに断念し、映像翻訳の仕事へ。東北新社でアルバイトとして働きながら吹き替え翻訳、字幕翻訳を修業し、先輩翻訳者の方々の紹介で映画字幕翻訳の仕事へ。趣味はジャズを聴くこと、バイク、スキー。
心に残る字幕翻訳:
「レオン」「ショーシャンクの空に」「コーチ・カーター」「トラフィック」「許されざる者」「フォーガットン」「ライディング・ザ・ブレット」「リプレイスメント」「バーティカル・リミット」等々。